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東京地方裁判所 昭和39年(ワ)6311号 判決 1966年9月26日

原告 立石電機株式会社

右訴訟代理人弁護士 大島正恒

被告 東京ケミコン株式会社

右訴訟代理人弁護士 樋口俊美

右訴訟復代理人弁護士 中野哲

被告 NTB株式会社こと エヌテイビイ株式会社

被告 有限会社富士電気製作所

主文

被告らは原告に対し、各自金九六〇、〇〇〇円及びこれに対する昭和三九年九月一四日から支払ずみまで年六分の割合による金員を支払え。

訴訟費用は被告らの連帯負担とする。

この判決は、被告らに対し、それぞれ金三〇〇、〇〇〇円の担保を供するときは、その被告に対し仮に執行することができる。

事実

<全部省略>

理由

第一、被告田辺、同会社に対する請求について。

一、「日本軽電器協同組合」という名称の法人格のない団体が原告との間に、日立製作所トランジスターの継続的供給契約を結び、被告らが右契約について連帯保証をしたことがあることは被告らのそれぞれ自認するところであり、この事実に、<省略>を綜合すれば昭和三八年一月頃に原告は未だ法人格を取得しない未登記の団体である訴外組合、すなわち被告らのいう「日本軽電器協同組合」との間に(右組合は未だ権利能力がないわけであるから、法律形式的には原告と後述のように当時訴外組合の代表者であった発起人槙利夫との間に)、上記の如き内容の契約を締結し、そして被告らがそれぞれこの契約について連帯保証したことが認められる。<省略>。

二、ところで、<省略>を綜合すれば、訴外組合は昭和三七年一一月頃被告らほか三名が発起人となって、中小企業等協同組合法に基き組合員のため原材料の共同購入、トランジスターラジオ部品の販売斡旋を目的とする事業協同組合の設立を目指して組織され、事業者二〇名程の設立の同意を得、その頃組合員総会を開催し、そこで発起人の一人である槙利夫を代表者(発起人代表)に選んで中央区銀座西一丁目一番地に事務所を設けて事務員を雇い入れ、対外的に統制された一個の団体として組合の名をもって諸種の取引を行ったこと、前記原告との契約もかような取引の一環として槙が訴外組合の代表者として連合名義でこれをなしたものであること、その後同三八年四月の総会において槙が辞任したので、新たに被告会社が発起人代表に就き、さらに同年五月中旬の総会で武井正幸(被告会社代表者)を代表理事に選出して、同年七月二二日主務官庁に設立認可を申請し、その結果翌八月二〇日その認可を得て、同年一〇月二一日組合設立の登記を経由したものであることが認められる。<省略>。

三、以上のような訴外組合の設立過程を観るとき、形式論的には訴外組合は主務官庁に対する設立認可の申請の段階においてその事業目的、人的構成、機構などが確定し、設立中の組合として、いわゆる権利能力のない社団として存在するに至ったと解すべきであり、そして最後に設立登記を経たことにより事業協同組合として成立し、法人格を取得したことになる。しかしながら、右のような法的性格の変化は法人成立の道程における段階的な発展推移を示すもので、その間における前後の異同は相対的なものに過ぎないのであり、加えて前項認定の事実に徴して、訴外組合においては少くとも原告との前記契約締結の頃から客観的に取引界の一員として存在しかつ組合の名義でその事業目的に副った取引活動を行って、既に社団としての実質を具えていたものと看做して差支えないのであるから、爾後はその社団性をより濃厚にしたものに他ならず、右契約時の組合と法人格取得後の組合とはその前後を通じて社会的実在としての同一性を有していると観ることができる。その結果、訴外組合が原告との間に結んだ上記の契約は(これは事業目的に副い組合設立のため不必要な行為とは目されない)右組合が設立中の組合として存在するに至った時点において同組合に当然承継され(この段階においては、訴外組合は未だ権利能力を有しないわけであるから、実質的には組合がその主体でありながらも法律形式的には発起人代表槙が当事者となって結んだ契約を設立中の組合の代表理事武井正幸が当然承継する)、また同契約に基く債務について被告らがした連帯保証もまたその附従性から上記の主たる債務に随伴して、実質的には設立中の組合のため、形式上は代表理事武井正幸のために原告と被告らの間に効力を有するというべきである。

四、<省略>を綜合すれば、訴外組合が設立中の組合として存在する昭和三八年一〇月三日から同月二六日までの間に、前記の如く包括的代理権を与えられていた富田実が代表理事武井正幸を代理して、前第一項の契約に基き組合名義で原告からその主張のようにトランジスター代金合計九六〇、〇〇〇円相当を買受けたことが認められる。

<省略>。

五、してみれば、被告らは第三項に提示した理に従い、前項のトランジスター代金について連帯保証人として、各自金九六〇、〇〇〇円と右債務が商行為に基くことは前叙事実に照して明らかであるから、これに対する弁済期を経過した後である昭和三九年九月一四日から支払ずみまで商事法定利率年六分の割合による遅延損害金を原告に対して支払うべき義務を負うといわねばならぬ。<以下省略>。

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